サッカー中継を見ていると、「PKです!」という実況を耳にすることがあります。 でも、サッカーを見慣れていないと、 ・どんな反則でPKになるのか ・PKとPK戦の違いは何なのか ・VARでPKが取り消されたり、やり直しになったりする理由 など、こうした“細かいところ”が意外とわかりにくいものです。 PKは、試合の流れを大きく変える特別なプレーです。 仕組みを知っておくと、観戦がぐっと楽しくなります。 この記事では、サッカー初心者の方にもわかりやすいように、 PKの意味・ルール・成功率・PK戦との違いを、私自身の体験談もまじえながら、数字や具体例を使ってお伝えします。
PKとは何か?意味とルールをやさしく解説
PKとは、「ペナルティキック(Penalty Kick)」を短くした言葉です。日本語に訳すと「罰のキック」という意味になります。
サッカーでは、相手チームの選手がペナルティエリアの中でルールに反することをすると、その「罰」としてPKがもらえます。PKでは、ゴールに向かって直接ボールを蹴るチャンスがあたえられます。
PKのときは、ふだんの試合とちがうルールになります。
- キックをする選手(キッカー)と、ゴールを守るキーパーの二人だけで勝負する
- ほかの選手は、ペナルティエリアの外まで下がる
- キッカーはゴールにボールを入れようとし、キーパーは止めようとする
まわりの選手は手伝うことができません。そのため、見ている人たちも「入るかな、止まるかな」と息をのみながら見つめることになります。
私の場合は、小学校の体育の授業でこの仕組みを最初に教わりました。そのときは、相手チームの選手も近くにいて邪魔をしてくるものだと思っていました。しかし実際にやってみると、グラウンドが静まりかえっていました。ペナルティエリアの外まで全員が下がるルールなので、自分の心臓の音とキーパーの息づかいまで聞こえそうなくらいの緊張感でした。
PKが生まれた歴史
サッカーの歴史をふり返ると、PKが生まれるきっかけになったのは、1891年2月にイングランドで行われたFAカップの試合です。
ノッツ・カウンティ対ストーク・シティの試合で、守っていた選手が相手のシュートを手で止めてしまいました。しかし当時は、まだPKという仕組み自体がありませんでした。罰は、フリーキックだけだったのです。
このできごとがきっかけとなり議論が進みました。そして同じ年の6月、PKというルールが国際サッカー評議会(IFAB)によって正式に採用されました。実際に史上初めてPKが行われたのは、同じ1891年の9月とされています。
わずか数か月のあいだに、サッカーのルールが大きく動いたのだとわかります。2026年の今からおよそ135年前に生まれたしくみが、形を変えながら今もつながれてきたと考えると、感慨深いです。
PKは、試合の流れを大きく変えることもあります。後半終了間際に1点差で負けているチームが、相手のハンドの反則でPKをもらい、それを決めて同点に追いつく。このような場面は、プロの試合でも実際によく見られます。
1回のPKが、90分間の努力を結果に変えてしまうこともある。だからこそ選手たちは、PKのチャンスを大切にしています。同時に、相手にPKを与えないように、ペナルティエリアの中ではいつも以上に注意してプレーするようにしています。
PKが行われるのはどんなときか
PKが行われるのは、「ペナルティエリア」という場所の中で、相手チームの選手がルールに反することをしたときです。
ペナルティエリアとは、ゴールの前にある長方形のエリアです。テレビでサッカーを見ていると、ゴールの近くに白い線で四角く囲まれた場所がありますが、それがペナルティエリアです。
このペナルティエリアの中で、次のようなことが起きると、審判はPKを宣言します。
- 相手の選手の足をひっかけてしまったとき
- 相手の選手を手で押してしまったとき
- 手や腕でボールにふれてしまったとき(これを「ハンド」といいます)
サッカーでは、ゴールキーパー以外の選手は、基本的に手や腕でボールにふれてはいけません。
ただし、手にボールが当たったからといって、それだけでPKになるとは限りません。
| 反則になりにくい例 | 反則になりやすい例 |
|---|---|
| 手を体に自然にそわせている | 手を大きく広げている |
| ボールが近い距離から強く蹴られ、とても避けようがなかった | ボールに向かって手を伸ばしている |
| 体に自然な位置にあり、意図があると見られにくい | 手が体から大きく離れ、意図的に見える |
審判は、腕の位置や、ボールとの距離、避けることができたかどうかなどを見て判断しています。
私の場合は、中学1年生のときの部活で、初めてハンドの細かい基準を教わりました。最初は「手にボールが当たったらすべてPKになる」と思っていました。ところが実際に顧問の先生から説明を受けると、腕が自然に体に沿っていれば反則にならないケースもあると知りました。それからは、ディフェンスのときに腕の位置を意識するようになり、約3か月間、練習のたびに体に沿わせる動きを繰り返しました。
VARとPKの関係
近年では、PKの判定にVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)も関わるようになりました。
VARとは、別の場所で映像を見ながら、フィールドの主審をサポートする審判のことです。
2018年3月、国際サッカー評議会(IFAB)がVARを正式なルールとして採用しました。同じ年の2018年ロシアワールドカップでは、初めてすべての試合でVARが使われました。
VARの導入によって、それまで見逃されがちだったペナルティエリア内の反則が見つかりやすくなりました。その結果、2018年ロシアワールドカップでは、全169ゴールのうち22ゴールがPKからのものとなり、それまでの記録(1998年大会の17ゴール)を大きく更新しました。
日本国内でも、2020年シーズンからJ1リーグの全試合にVARが導入されています。
ペナルティエリアってどんな大きさ?
ペナルティエリアは、ゴールラインから前に16.5メートル、横に40.32メートルの長方形です。
16.5×40.32で、面積はおよそ665平方メートルになります。
不動産の表示でよく使われる畳1枚の広さ(1.62平方メートル)で換算すると、665÷1.62でおよそ畳410枚分です。教室1部屋分よりもずっと広いエリアの中で、ハンドや反則が起きると、PKになる可能性があるということです。
私は、自分が通っていた中学校のグラウンドで、ペナルティエリアの対角線を実際に歩いてみたことがあります。自分の足で数えると、対角線を歩くのに約45歩かかりました。テレビで見ているときは小さく感じるラインでも、実際にその中に立つと、思っていたよりずっと広いと感じました。
PKを蹴る位置・細かいルールについて
ペナルティマークの位置
PKを蹴るときには、ボールを置く場所が決められています。それが「ペナルティマーク」という丸い印です。
ゴールから10.97メートルはなれた場所にあります。この距離は、大型の路線バス1台分の長さとほぼ同じくらいです。大人が大きな歩はばで歩くと、だいたい13〜14歩くらいの距離にあたります。
近そうに感じるかもしれません。しかし、ボールのスピードがとても速いため、キーパーにとっては反応する時間がほんの少ししかありません(詳細は後述します)。
PKには、いくつかの細かいルールがあります。
- ボールはペナルティマークの上に置く
- キッカーとキーパー以外の選手は、ペナルティエリアの外、かつペナルティマークより後ろに下がる
- キーパーは、ボールが蹴られるまでゴールライン上にいる
- キッカーは、ボールを一度蹴ったあと、もう一度自分でそのボールにふれることはできない
ゴールポストに当たって自分の前にボールが戻ってきても、もう一度シュートをすると反則になります。
ゴールキーパーの立ち位置ルールの変遷
ゴールキーパーの足の位置については、近年ルールが変わっています。
| 時期 | ゴールキーパーの立ち位置ルール |
|---|---|
| 2019年より前 | 両方の足がゴールライン上になければならない |
| 2019年の改正後 | 少なくとも片方の足がゴールライン上にあればよい |
| 2022年の改正後 | 片足がゴールラインに触れていれば、もう一方の足はラインより後ろでもよい |
もしキーパーがルール違反のポジションにいたことが確認され、シュートが決まらなかった場合は、PKがやり直しになることがあります。
私は小学生のときに「キーパーは両足ともゴールラインに乗せておかないといけない」と教わっていました。そのため、後になって2019年のルール改正を知ったときは少し驚きました。実際にキーパー役をやってみると、両足をラインに固定するよりも、片足だけ意識する方が左右に動きやすく感じました。
ほかにも、味方の選手がシュートの前にペナルティエリアの中に入ってしまった場合、シュートが決まったとしても、PKのやり直しになることがあります。細かいルールを選手全員が理解していないと、せっかく決めたゴールが取り消しになることもあるのです。
PKはなぜむずかしいのか?失敗してしまう理由
PKは、近い距離からゴールに向かってボールを蹴るだけです。そのため、簡単そうに見えるかもしれません。
しかし、サッカーの統計データによると、プロの選手がPKを蹴ったときにゴールが決まる割合は、調査の対象によって差がありますが、だいたい7割から8割程度とされています。言いかえると、10回のうち2〜3回ほどは失敗してしまうということです。
私は中学2年生のときの部活の練習で、PKを10本連続で蹴る練習をしました。最初は「キーパーがいても10本中9本くらいは決まるだろう」と思っていました。ところが、実際にキーパーを立てて蹴ってみると、最初の3本は緊張で大きく枠を外してしまいました。結局、10本のうち決まったのは6本でした。プロでも7〜8割程度だと知ったとき、自分の6割という結果がいかに難しいものだったかを実感しました。
失敗してしまう理由は、大きく2つあります。
理由1:心のプレッシャー
みんなが自分のキックに注目している中で、ひとりでボールを蹴らなければなりません。これは、とても緊張する場面です。試合の勝ち負けを決めるような大事なPKになると、心臓がドキドキします。いつもと同じように体を動かせなくなってしまう選手もいます。
海外のスポーツ科学の研究を紹介する記事の中には、こんな報告があります。キッカーがキーパーの動きを意識しながら慎重にシュートを打つと、成功率が6割程度に下がりました。反対に、自分の決めたコースに向かって思い切ってシュートを打った場合は、成功率が8割程度になりました。ただし、この研究を行った具体的な機関や対象人数は特定できていないため、あくまで参考としての数字です。
理由2:キーパーとの0.4秒の読み合い
キッカーはボールをどちらのコースに蹴るかを考えます。キーパーも同時に「どちらに飛ぶか」を予測しています。
サッカー全体のシュートスピードに関する統計では、プロの選手の平均的なボールスピードは時速100キロ前後といわれています。力強く蹴るタイプのPKでも、同じくらいのスピードが出ることがあります。
時速100キロは、1秒間に約28メートル進むスピードです。もしこのスピードでPKが蹴られたとすると、ペナルティマークからゴールまでの10.97メートルにかかる時間は、計算上わずか0.4秒ほどです。
キーパーは、この0.4秒の中でジャンプする方向を決めなければなりません。キッカーの蹴る方向を正しく読めなければ、ボールに追いつくことができません。だからこそ、キーパーはボールが蹴られる前からキッカーの助走の角度や目線を観察し、方向を読もうとするのです。
PK戦とPKのちがいについて
サッカーには、「PK戦」という言葉もあります。PKと名前は似ていますが、行われる場面と目的がちがいます。
| PK(ペナルティキック) | PK戦 | |
|---|---|---|
| 行われる場面 | 試合中にペナルティエリア内で反則が起きたとき | 試合が同点のまま終了したとき |
| 目的 | 反則に対する罰 | 勝敗を決めること |
| 蹴る人数 | 1人 | 各チーム5人ずつ(以降はサドンデス) |
| 試合への影響 | 試合中の1ゴールと同じ | 試合の勝敗そのものを決める |
ふつうのPKは、試合の中で、相手チームがペナルティエリア内で反則をしたときに行われます。一方でPK戦は、試合終了後に勝ち負けを決めるための、いわば「特別な延長戦」のようなものです。ワールドカップなどの大きな大会で、決勝トーナメントの試合が同点で終わったときに、このPK戦が行われることがあります。
私は、中学2年生の夏に経験した市内の地区大会の準々決勝で、初めてPK戦を経験しました。最初は「ふつうのPKと同じようなものだろう」と思っていました。しかし実際には、自分のチームの順番が来るまでベンチで待っている時間が、いつもの試合中とは比べものにならないほど長く感じられました。わずか数分間が、まるで1時間分くらいに感じられたことを、今でもはっきり覚えています。
PK戦のやり方
PK戦の進め方は、次のとおりです。
- 両方のチームから5人の選手が選ばれる
- 両チームが交代で1人ずつPKを蹴っていく
- 5人ずつ蹴り終えたあと、ゴールを決めた数が多いほうのチームが勝ち
- 同じ数だった場合は「サドンデス方式」に進む
- サドンデス方式では、1人ずつ交代で蹴り、片方が決めてもう片方が外した時点で勝負が決まる
サドンデスになると、1本外した時点で試合が終わります。そのため、ベンチも観客も、1球ごとに息をのむ緊張感が生まれます。
わたしが経験したPKにまつわる体験談
ここからは、わたし自身がPKにまつわって経験したできごとを、少しだけお話しします。
中学生の卒業間近に、地元の社会人チームの体験に行かせてもらいました。知り合いの近所のお兄さん、地元の先輩がいて、ワイワイするような雰囲気の良いチームでした。
2回目の体験参加時に、先週の引き分けの決着をつけることになり、各チームから3人ずつ蹴りましょう、というローカルルールが発動したのです。
今考えても、なんでそんな流れになったのか、とても不思議なのですが、そのくらい運営や大会ルールも当チーム同士に委ねられるようなゆるーい感じでした。
そして、キャプテンの一言で、私がチームを代表して2番目のキッカーに選ばれたのです。
外しても誰も怒らない、負けたことが、何かに大きく影響しない、そんなPK戦だったはずなのですが、当時の私には信じられないプレッシャーでした。
モノクロの無声映画のワンシーンのように、
- キーパーの左に蹴ったこと
- ゴールにボールが吸い込まれる様子
- 先輩が「右に蹴ると思ったよ」と言ったこと
それだけが、土の匂いと一緒に記憶されています。
30年前のことが、こんなに鮮明に蘇るくらい、緊張感があったんです。今振り返ってもメンタルスポーツだということが実感できます。
高校時代からの知人で、現在は地元のサッカースクールでU-10チームのコーチをしているA君に話を聞いたときも、似たような話を聞きました。A君は、練習の最後に10分ほどPK練習の時間を取り入れることが多いそうです。理由をたずねると、こう話してくれました。
「キックの技術も大事だけれど、それよりも、緊張する場面で落ち着いて自分のいつものプレーをする力を、子どものうちから身につけてほしいから」
この言葉を聞いて、PKというプレーは技術だけでなく、心の成長にもつながる経験なのだと、あらためて感じました。
まとめ:PKはサッカーの中でもとくべつな瞬間
ここまで、PK(ペナルティキック)について、ルールの数字や具体的な場面をまじえながら説明してきました。
最後に、記事のポイントをまとめます。
- PKとは:ペナルティエリア内の反則に対する罰として、キッカーとキーパーが一対一で行うキック
- 距離:ゴールから10.97メートルのペナルティマークから蹴る
- 成功率:プロでも7〜8割程度(調査対象によって差がある)
- 難しさの理由:心のプレッシャーと、0.4秒以内の読み合い
- VAR:2018年から国際的に導入され、ペナルティエリア内の反則が見つかりやすくなった
- PK戦:試合が同点で終わったときに、5人ずつのキックで勝敗を決める別のしくみ
こうして数字や経験を整理し直してみると、PKは「一対一で蹴るだけのシンプルなプレー」ではないことがよくわかります。10.97メートルという距離、0.4秒という時間、細かく変わり続けるルール。それらがすべて重なって、PKというプレーの奥深さが生まれているのだと感じます。
次にサッカーを見るときは、ぜひPKの場面に注目してみてください。これまでとはちがった視点で、試合を楽しめるようになると思います。
