サッカーでゴールが決まったのに、「オフサイド」の判定で取り消される。
そんな場面を見て、「何がいけなかったの?」と困ったことはありませんか。
筆者は、少年団のコーチを務めています。
保護者会で話していても、オフサイドを最後まで正確に説明できる方は、実は多くありません。
この記事では、小学生にも伝わるやさしい言葉で、オフサイドの基本ルールを解説します。
基本ルールだけでなく、知っておきたい例外や、VARの仕組みまで、コーチとしての体験談を交えてご紹介します。
読み終えたころには、試合中の「あ、今のはオフサイドだ」という場面に、自分で気づけるようになると思います。
オフサイドとは何か?サッカーの基本ルールをやさしく説明
オフサイドとは、味方からのパスを受け取るときに、攻めている選手が相手の守りより先に出すぎることを制限するルールです。
サッカーでは、スルーパスや、長い距離を一気に送るロングフィードがよく使われます。
相手の守備ラインの裏に走り込んだ味方に、ボールを通す攻撃です。
もしこの動き方に制限がなければ、こんな攻め方も成立してしまいます。
- 攻めている選手を、あらかじめ相手ゴールの近くに立たせておく
- 自陣からロングボールを1本送る
- 待っていた選手がそのまま受け取ってシュートを打つ
これでは、サッカーというスポーツの面白さが失われてしまいます。
そこで設けられたのが、オフサイドのルールです。
国際サッカー評議会(IFAB)が発行する「サッカー競技規則」の第11条には、次のように定められています。
ボールよりも前、かつ相手の守りの選手よりも前の位置で、パスを受け取ってはいけない
運動会のかけっこで例えると、わかりやすくなります。
「ヨーイドン」の合図より前にスタートラインを越えて走り出すと、フライングとして失格になります。
オフサイドも、これと似た考え方です。
味方からボールが出されるより前に、相手の守りを越えて先に進みすぎると、反則になります。
私の場合、毎年4月に新1年生の保護者向けにルール説明会を開いています。
最初は、「ボールより前に出てはいけない」という言い方だけで説明していました。
すると、保護者の半数近くが「攻めている選手は前に出たらだめなの?」と誤解してしまいました。
そこで、かけっこのフライングのたとえを使うようにしました。
説明にかかる時間は、約15分から5分ほどに短縮できました。
ただし、注意が必要な点があります。
「オフサイドの位置にいること」自体は、その時点ではまだ反則になりません。
反則になるかどうかは、その選手がボールに関わったかどうかで決まります。
この条件については、次の見出しで説明します。
オフサイドになる3つの条件をていねいに整理
オフサイドの反則が取られるためには、次の3つの条件がすべて重なる必要があります。
- 相手チームの陣地にいること
- ボールと相手の守備選手よりも前にいること
- プレーに関わっていること
それぞれを、順番に見ていきましょう。
1. 相手チームの陣地にいること
オフサイドは、「相手チームの陣地(自分のチームから見て前半分のフィールド)」にいるときだけが対象です。
自分のチームの陣地にいるあいだは、どれだけ前のほうにいても、オフサイドにはなりません。
2. ボールと相手の守備選手よりも前にいること
ボールよりも前にいて、なおかつ相手チームの「後ろから2番目の選手」よりも前にいる場合、「オフサイドの位置」にいるとみなされます。
例を挙げます。
相手チームの選手が、ゴールキーパーを含めて自陣に4人残っていたとします。
ゴールラインに最も近い選手から2人目までを、基準の線と考えてください。
攻めている選手が、その線より前でボールを受け取ると、オフサイドの位置にいることになります。
多くの場合、相手チームの一番後ろにいるのはゴールキーパーです。
そのため、実際には「ゴールキーパーの次に後ろにいる選手(多くはディフェンダー)」よりも前に出てしまうと、オフサイドの位置になりやすくなります。
なお、相手の選手とぴったり同じ位置に並んでいる場合は、オフサイドにはなりません。
あくまで「相手より先に出すぎている」ときだけが対象です。
3. プレーに関わっていること
ただオフサイドの位置にいるだけでは、反則にはなりません。
次のいずれかに当てはまったときに、はじめてオフサイドの反則として判定されます。
- 実際にボールに触れた
- その位置にいることで、相手選手のプレーをじゃました
- その位置にいることで、得をした
たとえば、左サイドのフォワードがオフサイドの位置にいたとします。
そのとき、右サイドからドリブルで突破した別の選手がそのままシュートを決めたとしましょう。
左サイドの選手が、ボールにも相手選手にも関わっていなければ、オフサイドの反則は取られません。
審判は、選手の位置だけでなく、その選手がプレーにどれくらい影響を与えたかという点まで見ながら判定しています。
最初は、私自身も「ボールより前にいたら、その時点でオフサイド」と思い込んでいました。
ところが、中学1年生のときに、考えを改めるきっかけがありました。
地区トレセン(トレーニングセンター)の練習で、コーチから次のように指摘されたのです。
「お前は最終ラインより前に出ていただけで、ボールにもプレーにも関わっていなかったから、今のはオフサイドじゃない」
プレーへの関わりまで条件に入っていると知ったのは、このときが初めてでした。
オフサイドにならない、知っておきたい例外のケース
オフサイドのルールには、大きく2つの例外があります。
- ゴールキック・スローイン・コーナーキックから直接受け取った場合
- ゴールキーパーがゴールを離れている場合
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
ゴールキック・スローイン・コーナーキックから直接受け取った場合
これらのプレーから直接ボールを受け取ったときは、たとえオフサイドの位置にいても、反則にはなりません。
たとえば、コーナーキックの場面を考えてみてください。
ゴール前で待っていたフォワードの選手が、キッカーが蹴ったボールをそのままヘディングで決めたとします。
その選手が相手の最終ラインより前にいたとしても、オフサイドの反則にはなりません。
ゴールキーパーがゴールを離れている場合
オフサイドの基準となる「相手チームの後ろから2番目の選手」は、ふだんはゴールキーパーがいちばん後ろになるため、ゴールキーパーの次に後ろにいる選手を指すことが多くなります。
ただし、ゴールキーパーがコーナーキックの守備やセットプレーの際に前に出て、ゴールを離れている場合は別です。
このとき、ゴールキーパーは「いちばん後ろの選手」ではなくなります。
代わりに、ゴールラインに近い位置にいる2人の選手(多くはディフェンダー)を基準に、オフサイドの判定が行われます。
私の場合、コーナーキックの例外を実際に目にしたのは、高校2年生のときの部活の練習試合でした。
ゴール前で待っていた味方が、コーナーキックをそのままヘディングで決めました。
相手チームの選手は「オフサイドだろう」と抗議しました。
しかし審判から、「コーナーキックは例外だから問題ない」と説明されていたのを覚えています。
実際にこの場面を見るまでは、私もこの例外を知らずに、同じような抗議をしていたかもしれません。
なぜオフサイドというルールがあるの?歴史と目的をひも解く
オフサイドの考え方は、19世紀半ばのイギリスから始まりました。
当時は、ボールを手で持って走ってもよい「ラグビー式」と、手を使わない「サッカー式」のフットボールが、まだ明確に分かれていませんでした。
これまでの変化を、表にまとめます。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 1863年 | イングランドでフットボール・アソシエーション(FA)設立。相手陣内で前方の味方にパスを送ることがほとんど認められない、現在より厳しいルールだった |
| 1866年 | ルール改正により、「相手選手が3人以上いなければオフサイドにならない」という3人制のルールが初めて導入される |
| 1925年 | IFABが基準を3人から2人に変更。攻めている選手が前のほうでプレーしやすくなる |
| 1990年 | 守備選手とぴったり同じ位置に並んでいる場合は、オフサイドにならないと明確化される |
| 2005年 | オフサイドの位置にいるだけでは反則にならず、プレーに関与した場合のみ反則になると明確化される |
特に大きな変化があったのが、1925年のルール変更です。
この変更によって、イングランドの1部リーグでは、得点数が大きく増えました。
変更前の1924-25シーズンには1,192点だった得点数が、変更後の1925-26シーズンには1,703点まで増えています。
1試合あたりの平均得点も、2.58点から3.89点に上昇しました。
実際にこの歴史を知ったのは、JFA公認コーチライセンスの更新講習会で配られた資料を読んだときでした。
当時の私は、オフサイドのルールが大昔からほとんど変わっていないと思い込んでいました。
そのため、約100年前の1925年にも今のような基準の見直しがあったという内容を読んで、驚きました。
最初は「昔のルールの話なんて、今の指導にはあまり関係ない」と思っていました。
しかし、変更の理由を知ってからは、保護者にルールの意図を説明するときの言葉選びが変わりました。
このルール変更が行われた目的は、試合をより面白くすることにありました。
オフサイドというルールがなければ、攻めるチームはゴール前に選手を置いておくだけで得点しやすくなります。
守るチームは、ずっと不利な状態になってしまいます。
反対に、オフサイドの基準が厳しすぎると、攻めるチームは前に進みにくくなります。
そうなると、得点が生まれにくい試合になってしまいます。
オフサイドは、攻める側と守る側のバランスを保つための規定です。
パスをつなぎながら守備をくずしていく、サッカーらしい攻防を生み出しています。
VAR(ビデオ判定)の登場で、オフサイドの判定はどう変わったのか
サッカーの大きな大会では、ビデオを使った判定のしくみが導入されています。
ここでは、その流れを整理します。
| 導入時期 | 判定の仕組み | 確認にかかる時間 | |
|---|---|---|---|
| VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー) | 2018年(ロシアW杯) | 審判が複数のカメラ映像を目視で確認する | 平均70秒ほど |
| 半自動オフサイドテクノロジー(SAOT) | 2022年(カタールW杯) | 専用カメラとボール内センサーのデータを、コンピューターが解析する | これまでより短く、数秒単位に近づく |
2018年6月から7月にロシアで開催されたFIFAワールドカップで、VARが世界大会として初めて公式に使用されました。
さらに、2022年11月から12月にカタールで開催されたFIFAワールドカップでは、半自動オフサイドテクノロジー(セミオートマティック・オフサイド・テクノロジー、SAOT)と呼ばれるしくみが新たに使われるようになりました。
FIFAが2022年に明らかにした内容によると、それまでのVARによるオフサイド確認には、平均70秒ほどかかっていたとされています。
SAOTの具体的な仕組みは、次のとおりです。
- スタジアムの屋根に設置された、12台の専用カメラを使用する
- 選手の体の29か所のポイントを、1秒間に50回追跡する
- 試合球の内部にもセンサーが入っており、1秒間に500回の割合でボールの動きに関するデータを送信する
これらのデータをコンピューターが組み合わせることで、味方の選手がボールに触れた瞬間の各選手の位置を、これまでよりも細かく計算できるようになりました。
判定の結果は、テレビの画面にも映し出されています。
オフサイドラインと選手の位置を示す線が引かれた、3D映像です。
視聴者も、なぜオフサイドと判定されたのかを、画面で確認できるようになっています。
私の場合、VARによるオフサイド判定を初めて目にしたのは、2018年のロシアワールドカップをテレビで観ていたときでした。
最初は、「機械が判定するなら一瞬で終わるはず」と思っていました。
ところが、実際には確認に2分近くかかる場面もありました。
隣で観ていた友人と、「これは長いな」と苦笑いしたのを覚えています。
それでも、画面に表示されるオフサイドラインを見てからは、それまで納得できなかった判定の理由が、自分の目で分かるようになりました。
子どもや初心者がよくつまずく、オフサイドの勘違いポイント
オフサイドについて説明していると、よく出てくる勘違いがいくつかあります。
- ボールを受け取った瞬間の位置で判定されると思いこんでしまう
- 「相手の守備選手」を数えるときに、ゴールキーパーを忘れてしまう
- 「オフサイドトラップ」という守備側の作戦を知らない
それぞれ、補足していきます。
ボールを受け取った瞬間の位置で判定されると思いこんでしまう
実際には、オフサイドかどうかは、味方の選手がボールをパスした瞬間の位置で判定されます。
たとえば、A選手がパスを出した瞬間、B選手が相手の最終ラインよりも後ろにいたとします。
この場合、B選手がそのあとに走り込んで相手の最終ラインを越え、パスを受け取っても、オフサイドにはなりません。
反対に、A選手がパスを出した瞬間に、B選手がすでに最終ラインを越えていたとします。
この場合、そのあとB選手が後ろに戻ってボールを受け取っても、オフサイドの反則になります。
「相手の守備選手」を数えるときに、ゴールキーパーを忘れてしまう
前の見出しで説明したとおり、ゴールキーパーがゴール付近にいる場合、ゴールキーパーも相手チームの選手として数に入ります。
「オフサイドトラップ」という守備側の作戦を知らない
守る側のチームが、あえて守備のラインを高く保つことがあります。
これによって、攻める側の選手をオフサイドの位置に追いこむ作戦です。
たとえば、相手フォワードがパスを受けようとした瞬間に、守備の選手たちがいっせいに前に出ます。
これにより、フォワードを意図的にオフサイドの位置に置くという使い方です。
実際に少年団の練習で、子どもたちに説明してみたことがあります。
あるシーズンのチームは、1年生から3年生まで合わせて22人でした。
そのうち、半数を超える12人ほどが、「ボールを受け取った瞬間の位置で判断される」という勘違いをしていました。
最初は口で説明するだけでしたが、コーンを2つ並べて、パスのタイミングを再現してみました。
翌週の練習では、ほとんどの子が正しく理解できるようになりました。
わたしの体験談:少年サッカーで実際に経験したオフサイドのエピソード
私が28歳の時、指導していた子と再会する機会がありました。
その子は小学3年生から5年生まで指導していた子です。約9年ぶりの再会でした。チームを卒業してからも中学、高校とサッカー部で活動し、卒業を迎える高校3年時に会ったのですが、一生忘れらないことを言われてしまいました。
「小学生の頃、オフサイドのこと分かってなかった」
「そもそも、コーチが何言っていたか全然わかんなかったよ。」
私は腹を抱えて笑ってしまいました。
足が早く、裏抜けが得意なプレースタイルだったので、オフサイドは当然理解していたと思っていたのですが、理解していなかったようです。実は、高校生当時もわかっていなかったと言っていましたが(笑)
オフサイドは、選手活動をしている子にとっても、そのくらい難しいことのようです。完璧に理解するより楽しむことの方が近道なのかもしれませんね。
まとめ:オフサイドを理解すると、サッカー観戦の見方が変わる
オフサイドは、味方からのパスを受け取るときに、攻めている選手が相手の守りより前に出すぎることを制限するルールです。
反則として判定されるのは、次の3つが重なったときでした。
- 相手チームの陣地にいること
- ボールと相手の守備選手より前にいること
- プレーに関わっていること
知っておくと観戦のときに役立つ点も、いくつかありました。
- ゴールキック・スローイン・コーナーキックから直接受け取った場合は適用されない
- ゴールキーパーがゴールを離れている場合は、判定の基準が変わる
- 判定のタイミングは、「パスが出された瞬間」である
私自身、こうしてルールを言葉にして説明できるようになるまでには、コーチになってから約3年かかりました。
最初はルールを知っているだけで十分だと思っていました。
しかし、これまでの3年間でのべ60人ほどの子どもたちや保護者に説明する経験を重ねるうちに、自分自身の理解もより深くなったと感じています。
次にサッカーの試合を見るときには、この記事で挙げた条件を思い出してみてください。
オフサイドの判定にも注目してみると、試合の見方が少し変わるかもしれません。
