「今、手に当たったのに笛が鳴らなかった」
「さっきはハンドだったのに、今のはなんで流したの?」
お子さんのサッカーを観に行くと、こんな場面に出くわすことがあります。実際に筆者も、初めて少年サッカーの試合を観た時、隣にいた保護者の方と「今のはハンドじゃないの?」と首をかしげたことがありました。
ハンドは、サッカーのルールの中でもとくにわかりにくいと言われる反則です。プロの試合でも判定をめぐって議論になることがあります。
この記事では、サッカー観戦を始めたばかりの方や、お子さんの試合を応援する保護者の方に向けて、ハンドの基本・「反則になる場合・ならない場合」・観戦時の見分け方を順番に解説します。
ハンドとは?まず基本をおさえよう
ハンドとは、ゴールキーパー以外の選手が手や腕でボールを扱ってしまう反則のことです。
正式には「ハンドリング」といい、競技規則の第12条「ファウルと不正行為」に定められています。
サッカーは「フット(足)+ボール」という名前のとおり、足でボールを扱う競技です。手を使ってよいのは、自分のペナルティーエリア内にいるゴールキーパーだけです。
それ以外の選手が手や腕でボールに触れると、相手チームにフリーキックやペナルティーキック(PK)が与えられます。
ただし、ここが重要なポイントです。
「手や腕に当たれば、必ず反則になるわけではありません」
手に当たったからといってすべてがハンドとなるわけではなく、そのためサッカーを始めたばかりの頃は特にわかりづらいルールの一つと感じるでしょう。
なぜそうなるのか、次の章で見ていきます。
なぜ「手に当たった=反則」ではないの?
結論から言うと、**「手や腕の動きが自然だったか、不自然だったか」**で判定が変わるからです。
サッカーは動きの激しいスポーツです。走ったりジャンプしたりすれば、腕は自然に動きます。その自然な動きの中でたまたまボールが当たっただけのものまで反則にすると、試合が止まってばかりになってしまいます。
そこで競技規則では、「意図的に手で触れたか」「体を不自然に大きく見せていたか」といった点を考慮して判定する考え方がとられています。
たとえば、転びそうになって地面に手をついた。その手にボールが当たった。
この場合、体を支えるための自然な動きなので、多くの場合は反則になりません。
一方で、ゴール前でシュートコースを塞ごうと腕を外側に大きく張った。そこにボールが当たった。
この場合は、「不自然に体を大きく見せていた」と判断されやすく、反則になる可能性が高まります。
つまり**「手に当たったかどうか」ではなく、「その手や腕の動きが正当だったか」**が、ハンドを見分ける一番のポイントです。
ハンドの反則になりやすい代表的なケース
では、具体的にどんな場面でハンドと判定されやすいのでしょうか。競技規則をもとに、わかりやすく整理します。
ケース1:わざと手や腕でボールに触れたとき
最もわかりやすいケースです。
「意図的なハンド」とは、手や腕をボールの方向に動かしてボールに触れることをいいます。ゴール前でシュートを手で止めようとする、といったプレーが典型例です。
ケース2:腕を広げて体を「不自然に大きく」見せたとき
わざとでなくても、腕を広げてボールに触れやすい状態を作っていた場合は反則になることがあります。
競技規則では、次のような状況が「不自然に体を大きくしている」とみなされます。
- 手や腕が明らかに体から離れ、外側に伸びている
- 手や腕が明らかに肩より上に上がっている
手や腕の位置が、その状況における競技者の体の動きによるものではなく、また、競技者の体の動きから正当ではないと判断された場合、競技者は不自然に体を大きくしたとみなされる。競技者の手や腕がそのような位置にあったならば、手や腕にボールが当たりハンドの反則で罰せられるリスクがある。
「その腕の動きは、今のプレーに本当に必要だったか?」という視点で見られている、とイメージするとわかりやすいでしょう。
たとえば、ジャンプしてヘディングするとき、バランスをとるために腕を少し広げるのは自然な動きです。でも、それ以上に腕を横へ大きく広げていたら、「不自然」と判断される場合があります。
ケース3:手や腕に当たった直後にゴールが入ったとき
偶然手に当たってしまっても、その直後に得点が生まれた場合は反則になります。
たとえば、攻撃の選手が腕でボールに触れ、そのままゴールに入ったケースです。
偶発的であっても、ゴールキーパーを含め、自分の手や腕から直接ゴールに入った場合、または偶発的であっても、ボールが自分の手や腕に触れた直後にゴールに入った場合は反則となります。
「たまたま当たっただけなのに」と思うかもしれませんが、得点への直接的な影響を避けるために、このようなルールになっています。
ケース4:キーパーにも手が使えない場面がある
手を使えるキーパーにも、例外があります。
フィールドプレーヤーが自分のゴールキーパーに対し、意図的に足でボールをキックし、そのゴールキーパーが手でボールに触れた場合、間接フリーキックが与えられます。
また、バックパス違反は「足でのキック」が条件なので、頭・胸・膝・腹部・肩などで戻したボールはGKが手で拾っても問題ありません。
つまり「キーパーならいつでも手でOK」というわけではなく、味方が足で蹴って戻してきたボールだけは手で扱えません。覚えておくと観戦がぐっとわかりやすくなります。
反対に「ハンドにならない」ケースもある
ハンドを理解するうえで、「反則にならない場面」を知っておくことも大切です。ここを知っているだけで、観戦中の「なんで笛が鳴らないの?」というモヤモヤがかなり減ります。
ケース1: 転倒時に体を支えた手に当たった場合
倒れ込みながらタックルやブロックをしようとしたとき、体を支えるために地面に向かって伸ばした手や腕にボールが当たった場合には反則にはならないとされています。
「体を支えること」が目的であり、ボールを扱おうとしたわけではないからです。
ケース2:避けようがなかった「偶発的」な場合
自分自身でプレーしようとしたボールが思わぬはね返り方をして腕や手に当たったとき、または避けようがないほど近くにいる他のプレーヤーがプレーしたボールが当たったときも、反則にならないことがあります。
至近距離でいきなりボールが飛んできて、よけようがなかった、というような場面です。
ケース3:体(胸や頭など)に当たってから腕に触れた場合
別の競技者の頭または体から直接ボールが触れた場合や、手や腕が体の近くにあって不自然に体を大きくしているわけではないときは、反則にならないこともあります。
たとえば、胸でトラップしたボールがそのまま脇に触れた、というようなケースです。
ただしこれらの判断は、すべて審判がリアルタイムで行います。見ている人によって意見が分かれるのは自然なことで、プロの試合でも判定が議論になる場面はよくあります。
「腕」はどこから?知っておきたい肩との境界線
ハンドでよく話題になるのが、「どこまでが腕で、どこからが肩なのか」という問題です。肩にボールが当たった場合は、基本的にハンドになりません。
競技規則(第12条)では、腕の範囲について次のように定められています。
ハンドの反則を判定するにあたり、腕の上限は、脇の下の最も奥の位置までのところとする。
つまり、脇の下のいちばん奥から手指の先までが「腕」であり、そこから肩にかけての部分は「肩」として扱われます。
テレビでリプレイ映像が流れたとき、「ボールが当たったのは脇の下の奥より手側か、肩側か」を意識して見ると、審判の判定理由が少し見えてきます。
ただし、ボールが当たる瞬間は一瞬なので、現場で判断するのは審判であっても難しいことです。そのため近年は、VARという映像確認システムが活用されています。
VARについての詳細はこちらの記事で詳しく解説しています
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ハンドをしたらカードが出るの?罰則をわかりやすく解説
「ハンドをしたら必ずカードが出るの?」という疑問もよく聞かれます。
結論から言うと、ハンドをしただけではカードは出ないことがほとんどです。
反則の場所や状況によって、与えられる罰則は次のように変わります。
- ペナルティーエリア外でのハンド → 直接フリーキック
- ペナルティーエリア内でのハンド → ペナルティーキック(PK)
カードが出るのは、反則に「悪質さ」や「決定的な場面での阻止」が伴う場合です。
意図的なハンドによって、決定的な得点機会を阻止した場合(DOGSO)は、ペナルティーキックが与えられた場合でもレッドカードの反則となります。
たとえば、相手がほぼ確実にゴールを決めるような場面で、守備の選手がわざと手でシュートを止めた、というような場合が該当します。
お子さんの少年サッカーの試合では、こうした場面で審判が正確に判断するのは難しいこともありますが、基本的な考え方はプロの試合と同じです。
観戦時に使える「ハンドの見分け方」3ステップ
ここまでの内容を、試合観戦でその場に使える形でまとめます。
「今のはハンド?」と思ったら、次の順番で確認してみてください。
ステップ1:選手はボールの方向へ腕を動かしていなかったか?
動かしていれば、意図的なハンドの可能性が高まります。たとえばシュートに向かって腕を伸ばしていたら、まず反則です。
ステップ2:腕が体から大きく離れていたり、肩より上に上がったりしていなかったか?
手や腕が体から離れた位置にあった状況でそこにボールが当たれば、ハンドの反則になる可能性が高まります。腕が広がっているかどうかを意識して見ると、判定の理由がわかりやすくなります。
ステップ3:当たったのは「腕」か「肩」か?
脇の下の奥から手指の先が「腕」、それより肩寄りが「肩」です。肩に当たっている場合は、原則ハンドになりません。
この3ステップを頭に入れておくだけで、「腕が開いていたから反則になったのかも」「肩に当たっていたから流したのかも」と、自分なりに判定の理由を考えられるようになります。観戦がずっと楽しくなりますよ。
よくある疑問Q&A
「ハンドってこういうとき、どうなるの?」という疑問を3つ、簡潔に答えます。
Q. 子どもの少年サッカーでもハンドのルールは同じですか?
A. 基本的な考え方は同じです。ただし、小学生の大会(8人制など)では年齢や大会ごとのルールに応じて運用が異なる場合があります。気になるときはチームのコーチや担当審判に確認してみましょう。
Q. ハンドでPKになった場合、蹴る前に何か決まりはありますか?
A. あります。ボールはペナルティーマークに置き、キーパーはゴールライン上に立つ必要があります。キッカーとキーパー以外の選手は、ペナルティーエリアの外で待機しなければなりません。
Q. テレビで審判が迷っているように見えるのはなぜですか?
A. ハンドは「意図的かどうか」「腕の位置が自然かどうか」という主観的な要素が含まれるため、プロの審判でも難しい判断が求められます。だからこそVARによる映像確認も行われています。
まとめ:ハンドは「手や腕の動き」で見分けよう
この記事のポイントを振り返ります。
- ハンドとは、キーパー以外の選手が手や腕でボールを扱う反則(競技規則 第12条)
- 「手に当たれば必ず反則」ではなく、手や腕の動きが自然か不自然かが判定の基準
- わざと触れた・腕を広げて体を大きく見せた・ハンド直後のゴールは反則になりやすい
- 転倒時に体を支えた手への接触・避けようがなかった偶発的な場合は反則になりにくい
- 「腕」の上限は脇の下の最も奥の位置まで(肩への接触は原則ハンドの対象外)
- 判定が難しい場面はVARによる映像確認でサポートされる
- ハンドだけではカードは出ないことがほとんど。決定的な場面をわざと阻止した場合は退場になることもある
ハンドはプロの審判でも判断が難しいルールです。だからこそ、「なぜ反則になったか・ならなかったか」を自分なりに考えながら観ることができると、試合観戦がぐっと楽しくなります。
お子さんの試合やテレビ観戦の際に、ぜひ今日のポイントを思い出してみてください。
